客あしらい

週末土曜日の昼をまわった頃、ある蕎麦屋の暖簾をくぐる。銀座の老舗の店だ。生ビールと花巻蕎麦を注文する。海苔の香りが立つごちそうだ。上品なハットをかぶった銀座らしい紳士が入って来られた。その優雅な立ち居振舞いから品格がわかる。日本酒と板わさ、天ぷらの盛り合わせ、そしてもり蕎麦を注文された。蕎麦前の王道だろう。日本酒と板わさがすぐにくる。とてもいい雰囲気だ。ただ、注文を受けた若い女の子は続けざまにもり蕎麦を運んできた。確かに女の子は注文を受けたものを運んできた。間違ってはいない。ただ、少し悲しくなった。紳士は私の方を見てニコリと笑った。本物の紳士は格好いい。