客あしらい

週末土曜日の昼をまわった頃、ある蕎麦屋の暖簾をくぐる。銀座の老舗の店だ。生ビールと花巻蕎麦を注文する。海苔の香りが立つごちそうだ。上品なハットをかぶった銀座らしい紳士が入って来られた。その優雅な立ち居振舞いから品格がわかる。日本酒と板わさ、天ぷらの盛り合わせ、そしてもり蕎麦を注文された。蕎麦前の王道だろう。日本酒と板わさがすぐにくる。とてもいい雰囲気だ。ただ、注文を受けた若い女の子は続けざまにもり蕎麦を運んできた。確かに女の子は注文を受けたものを運んできた。間違ってはいない。ただ、少し悲しくなった。紳士は私の方を見てニコリと笑った。本物の紳士は格好いい。

風景

厳寒の京都に行く。関西は板前割烹という文化があり、目の前で色々な提案を聞きながら料理を選ぶことができるので楽しい。すっぽん鍋は大市の丸鍋が有名だが、一人前の小鍋を熱々で作ってくれる。仲良くなると、知り合いや同門の一見では入れない店を紹介してくれるので、縁が広がり奥が深くなる。隣の70代後半だろうと思われる御夫妻がまた来年も来れるかなと話されている。いつか一緒に来れない日が必ず来る。だから大事に食事を楽しんでいらっしゃるのが伝わってくる。もう一方では20代のカップルが傍らに一眼レフを置いて写真を撮っている。写真はいっこうに構わないが、もう少し早く食べた方が料理の作り手は喜ぶよと思いながら、その幸せそうな風景に心が温かくなる。

前菜

中華料理店に行くとまず前菜を頼む。グループの場合は三種や五種の万人受けする前菜の盛り合わせというのが多いが、最近はよだれ鶏を出す店が増えてきた。それを看板に出す店もあるなか、味は様々である。今まで食べた中で一番口に合ったのは四川飯店のよだれ鶏だ。タレも良いが、鶏の状態がとても良い。一人なら紹興酒とこれだけでいい。

カメリア

今年の秋グランドオープンするオークラの旧本館にテラスレストランという素敵なレストランがあった。気候のいい日はテラスで鳥の鳴き声を聞きながらブランチを楽しむことができた。今、ホテルは別館のみで営業しているが、フロントを抜けたところに昔からあるレストランがカメリアだ。一日中開いているので、いろいろな用途で利用することができるが、一番空気が良いのは朝食ビュッフェの喧騒が終わりかけた週末の午前中だろう。シャンパンをグラスで飲んでいるおそらく住んでいるだろうと思われる常連のマダムの横で、ゆっくりとした都会の朝を味わえる。

アフタービーチ

国内外を問わずリゾートのビーチで過ごす時間は気持ちが良い。ホテルのプールの方が快適さから言うと上かもしれないが、波の音は他には換えがたい世界がある。ビーチで会った外国人と夕暮れのレストランですれ違う。ヨーロッパの人たちは焼けた肌にジャケットを着ている。アメリカ人はポロシャツに短パンだ。面白いものである。